突然ですが、皆様はペットを飼っていらっしゃいますか?
もし皆様がペットを飼いたいと思った場合には、恐らくペットショップに行くことになるでしょう。
期待に胸を膨らませてお店に入ると、その光景は癒しの楽園。
ワンちゃんや猫ちゃんがたくさん居て、その愛くるしさに目を奪われてしまうでしょう。
そして、大体の人が思うのではないでしょうか?
(ペットショップのお仕事って楽しそう!)
と。
勿論、やり甲斐や楽しさもありますが、表では分からない大変な業務も多く存在します。
申し遅れましたが、筆者はペットショップの店員としてお仕事に勤めております。
今回は、そんな私が体験したペットショップの裏側ととあるワンちゃんとのお話をご紹介したいと思います。
ペットショップの店員とは
何を隠そう、私も実家でペットを飼うことになり、
その時にペットショップに足を踏み入れて、「ペットショップって楽しそう」と思った人の一人です。
小さい頃から道端で猫ちゃんやワンちゃんの姿を見ると目が釘付けになり、
常々ペットを飼いたいと思っておりました。
そして念願のワンちゃんを飼えることになり、
ペットショップという癒しの楽園のアーチをくぐったのでした。
購入した犬種はヨークシャーテリアで、とても人懐っこく、
学校から帰るとゲームや勉強もせずにペットとよく遊んで戯れておりました。
当時、高校生だった私は、将来についてあまり深く考えておりませんでした。
必要最低限の勉強だけして…なんて思っていたわけですが、
実家で飼っているワンちゃんと過ごしている内にある事をだんだんと思うようになってきたのです。
(ペットショップで働いたら楽しそう…)
そしてその想いは、いつしか真剣に感じるようになってきたのです。
そして何とか大学生というステージに上がった私は、
人生の初のアルバイトをペットショップの店員としてデビューしたのでした。
アルバイトもペットショップのお仕事も何もかも初めてだった私でしたが、
胸の中は期待と嬉しさで一杯でした。
(大学の勉強よりもずっとこのお仕事をしていたい…)
まだ仕事が始まっていないのにも関わらず、そんな妄想に想いを馳せていたのですが、
現実はそんなに甘くはありませんでした。
ペットショップのお仕事
先ずは、簡単にペットショップの一日の流れをお伝えしましょう。
(販売している動物の種類にもよりますが、私の場合は、猫ちゃんとワンちゃんでした)
①開店前(開店10時までに)
⇒お店の開店準備
⇒動物達の体調チェック
⇒エサやり
⇒ケージなどの掃除(除菌も徹底します)
⇒各動物の体重測定
②開店から閉店まで(閉店の20時まで)
※動物愛護管理法により、動物を展示出来る時間は午前8時から午後8時と決まっております。
⇒お客様のご案内
⇒エサやり(動物によって回数が違います)
⇒ワンちゃんの散歩
⇒爪や毛のお手入れ、グルーミング
⇒掃除
⇒電話対応
③閉店後
⇒販売管理(売上チェックやレジ締)
⇒動物の体調管理
⇒発注業務や掃除、エサやり
④イレギュラー対応
⇒下痢や嘔吐が止まらない、体調が悪いなどの症状が見られる場合は、病院に連れていく
以上、ざっくりですが一日のスケジュールを書き出してみました。
何となく、どんなお仕事内容かは分かっていただけたと思います。
しかし、あえてここではっきり言いましょう。
命と世話に責任を持てない、お仕事に飽きてしまいそうな方は、残念ながらペットショップでは働かない方がいいです。
と言いますのも、基本朝から晩まで気を張りっぱなしで、動物は人間と違って言葉は喋れませんし、体調においてもいつイレギュラーな事が起きるか分かりません。
そして、イレギュラーな事が起きた時に「どうすればいいか分からない」は通用しないのです。
「命を預かっている」という事実を常に念頭において仕事をしないといけません。
ですから、当時私も仕事が始まって最初の頃は、責任をとても重く感じるお仕事の内容にすぐ辞めようと思ってしまいました。
実家のペットは懐いてくれましたが、ペットショップの動物達はそうはいきません。
こちらが恐れていると、動物達はそれを察してますます警戒し、ケージから出したりエサをあげたりする業務にもかなりの苦労を強いられます。
私は、週に3日程の出勤をしておりましたが、
その出勤日は毎日毎日緊張と気疲れの日々でした。
そんな中、特に私に懐いてくれないワンちゃんが居たのです。
次は、そのお話をしましょう。
とあるワンちゃんとのお付き合い
ペットショップで販売されているワンちゃんと猫ちゃんは、勿論それぞれ性格や元々の気性が違います。
そんな中、私がどうしてもお世話が上手くいかないワンちゃんが居たのです。
犬種はパピヨンで、警戒心が強く、元々吠え癖や甘えん坊な気性のワンちゃんです。
私が近づくと吠えたり隅っこに行ってしまったり、また触ろうとすると非常に嫌がるので、そのパピヨンは、可能であれば他の従業員さんに手伝ってもらいながらお仕事をしました。
「動物だって色々いるからね。そりゃ一匹や二匹、相性が合わないのも居るわよ」
そう言って他の従業員の方は励ましてくれましたが、私にとっては結構ショックでした。
(嫌われるって辛いなぁ…)
大好きなペットに囲まれているはずなのに、逆にそれがだんだんと辛く、嫌になってきてしまったこともありました。
幸い実家で飼っているワンちゃんとはうまくやれていたので、
そのワンちゃんに励ましてもらいつつも、何とかそのパピヨンとの距離を近づけようと工夫をしました。
それから月日が経ち、2か月くらいした時の事です。
(やっと…吠えなくなった…)
私に対して吠えていたパピヨンがようやく警戒を解いてくれたのか、
触ってもおとなしくしてくれるようになったのです。
(良かった…本当に良かった…)
その時の嬉しさは今まで味わったことの無いような感覚で、
仕事の休憩中は、ずっとにやにやしていたと思います。
しかし、運命とは残酷なものです。
何と、ちょうど私が出勤している日にそのパピヨンの購入が決定してしまったのです。
(まぁでも、最後に少し仲良くなれたから良かったかな…)
私は、そのパピヨンのことよりも自分のことを労って、次のスキルアップに繋げていこうと思いました。
そして、そのパピヨンがお客様と一緒に連れていかれる時でした、
「くぅーん…」
と、そのパピヨンが私に向かって声を出したのでした。
その時に私は、何故か少し泣いてしまったのです。
さっきまで自分の役目は果たしたと思って納得していたのですが、
全く違う気持ちが自分の心になだれ込んでしまったのです。
(行かないで…)
心の底からそう思ってしまいました。
一瞬、お店を後にしようとするお客様に「待って」と言いそうになりましたが、
何とかそれだけは堪えてその瞬間は過ぎ去りました。
その後、私は暫く落ち込みましたが、
実家に帰って自身の飼っているワンちゃんを抱きかかえるとようやくホッとし、
改めてお仕事に対して頑張ろうと意気込んだのでした。
最後に
以上ここまで、私が体験したペットショップの裏側ととあるワンちゃんとのお話をご紹介しました。
ペットショップの表側で感じていた事と実際に裏側を知った時のギャップにはすさまじいものがありましたが、それでも動物達のお世話をして懐いてくれた時の嬉しさは何度体験しても良いものです。
ペットショップは、決して安易に出来るお仕事ではありませんが、それでも動物に愛情を注いでくれる方なら大歓迎です。
これからも私は、動物達の幸せを願いながらこのお仕事に尽くしていきたいと思います。
diary.st著
