今や日常で当たり前に見かける動物達。
特にワンちゃん、猫ちゃんは人々からペットとして人気で、多くの方が飼っております。
筆者こと私は、実際にペットを飼ったことはありませんが、
私の人生の中でとあるワンちゃんとの思い出が非常に色濃く残っており、今でも忘れられません。
今回は、私の人生を変えたと言っても過言ではない、私にとって特別な思い出の話をご紹介しましょう。
いじめられっ子の私
開始早々いきなり告白をしてしまうと、私はいじめられっ子でした。
当時私は小学生で、気が弱く、クラスに居たジャイアンみたいな子に目を付けられてしまったようで、いつも馬鹿にされておりました。
ただ現代において厳しいのは、その言い方です。
漫画に出てくるような、
「やーい、お前の母ちゃんデべそ」
「泣き虫~」
みたいな感じなら、ある意味まだ良かったかもしれません。
「何でこんなことも出来ないの?」
「おまえさぁ、それ間違ってるよ?」
「お前がいると面白くないんだよね」
「頭が悪いとこの先苦労するよ」
何と言いますか、こちらにもある意味「出来なかった」という点で非がある時の責められ方や自身の存在を否定してくるような言い方をされると、本当に嫌な気持ちになり落ち込むんですよね。
相手は、別に悪口を言っているつもりはなく、言い方が優しくないだけと言いますか、
これだといじめにはならないと思う方もいらっしゃるかもしれません。
挙句の果てには、「出来ない君が悪い」と言われようものなら、
こちらに言い返す術はもうないでしょう。
それでもこちらとしては、いじめられていると思っているわけですが…
さて、愚痴はこれぐらいにしておいて、次から本題です。
僕の守り神?
気弱でクラスのお山の大将に目を付けられてしまった私は、いつも恐がりながら学校に通っておりました。
そんな私の唯一の楽しみは、学校帰りにいつもする自宅の近所に飼われている犬とのお話しでした。
お話しといっても私が一方的に喋っているだけですが、
その犬は私が触っても近くに行っても決して吠えたり噛んだりすることは無く、
じっと私の言葉を聞き続けてくれるのです。
「お前だけだよ、僕の味方は…」
その犬の犬種は、当時の私には分からなかったのですが、
大人になってから調べてみると驚きました。
あのドイツ原産の超大型犬「グレートデン」だったのです。
子供の時にある意味ジャイアンよりも怖い存在によく近寄っていたなぁと思いますが、
とにかくその犬の体格が大きかったのは今でもよく覚えております。
恐らく…ですが…、知り合いの近所の犬であり子供目線ということもあって、
心の中でどこかかっこいいと思っていたのでしょう。
今から思えばその犬の名前が本当に面白く、「デン」と言いました。
デンと堂々としているその立ち振る舞いに、私が危ない時は自分を守ってくれる守り神みたいな存在だと思っていたのかもしれません。
びっくりしたのは私だよ!
ある時、私が学校帰りにデンをいつものように撫でていると、何故かは知りませんが、
私の後ろをあのいじめっ子とその取り巻き達が通りかかったのです。
私は、後ろに足音がしたので振り返りました。
そして、目の前を見るといじめっ子達がニヤニヤとしながらこちらを見ていたのです。
「何やってんだよ」
いじめっ子は、ヘラヘラしながら言いました。
「別に…」
私は、特に言い返せるような言葉が見つからず、目を逸らしながら俯き加減で言いました。
「おまえさぁ、勉強出来ないんだから勉強したら?」
改めて言いますが、「弱虫」みたいな悪口ならまだ気にしないという事も出来るかもしれませんが、自身でも気にしていることをこのように指摘してくることが何とも嫌でした。
「後でやるよ…」
そう言って、私はデンの方へ向き直り、また撫で始めました。
「はぁ~、お前って本当に馬鹿だな!」
また、子供らしいストレートな言い方がムカつきます。
いじめっ子達が私を馬鹿にして笑いながら、私に近づいてきました。
「おいっ!俺が勉強教えてやるよ」
その時です。
デンが急に立ち上がり、大きな鳴き声でワンワン吠え始めたのです。
今思えば、道を通る人や周りの家の住人も不審に思ってこちらを注目するような、
本当に大きな鳴き声でした。
いじめっ子達は少しよろめいたようですが、その顔はすぐにニヤケ顔に変わりました。
いじめっ子達よりも、まず自分自身が尻もちをついてガクガク震えていたからです。
「見ろよ、こいつビビッてやんの!」
「さすが馬鹿だなぁ~」
「こんな所で遊んでるからだよなぁ」
いじめっ子達は口々にそう言って、その場を笑いながら去っていきました。
いじめっ子達が居なくなるとデンは吠えるのを止め、
再びいつものように地面に座りました。
私は、腰が抜けていたのか暫く動くことが出来ませんでした。
しかし、デンがいつもの雰囲気に戻ったのを見て私は少し安心したのか、
何とか立ち上がって、そのままデンに別れの挨拶もしないで自宅に帰ったのでした。
お手本?
そんな事があったからか、私は、暫くデンには近寄れませんでした。
(また、吠えたらどうしよう…)
当たり前ですが、そんな気持ちで一杯だったのです。
(でも本当に怖かったなぁ)
私は、すっかりトラウマになってしまったみたいで、
唯一の味方を失ってしまったような気さえしておりました。
ただ…
今から思えば面白いと感じる変化が私に起きたのです。
先ず、いじめっ子達によく言われる言葉が全く気にならなくなったのです。
正確に言えば、引きずらなくなりました。
そして、何故だか勉強に励むようになったのです。
励むと言っても毎日毎日受験生のように勉強するような感じではありませんでしたが、
宿題は勿論のこと、授業で勉強した内容をその日に復習するようになりました。
おかげで、日々の授業に付いていけるようになり、成績も少しずつ良くなりました。
その後暫くしてから、私はまたデンに近寄れるようになり、
デンもその後はあの時にように吠えることはありませんでした。
これも恐らくですが、理由は、「今までに無いとってもこわい出来事を経験した」からだと思われます。
あの出来事に比べたら、いじめっ子の声や言葉も大したことは無い、そんな感じでしょうか。
そして、何故か精神的にたくましくなったからなのか、
自分の弱点を克服しようと勉強もするようになり、弱気な自分を強くしようとしたのでしょう。
理由が「そんな事ってある?」と言われてしまいそうな感じですが、
私は口を大にして言います。
「デンが立ち上がって吠えた時、本当に怖かったんですよ!!」
って。
大人だって多分恐ろしいと思いますよ。
皆様は、グレートデンの大きさを知っていますか?
文字通りググってみると合成じゃないかと思うほどの大きさの犬もいます。
デンは、「男ならこれくらいの迫力と勢いを持て」という見本を見せてくれたのかもしれません。
まぁ、普通ならトラウマになって犬嫌いになりそうですがね。
最後に
以上ここまで、私の人生を変えたと言っても過言ではない、私にとって特別な思い出の話をご紹介致しました。
極論であると分かりつつも言いますが、人間は本当に恐ろしい体験をすると、
ちょっとやそっとじゃ動じなくなるのではないのでしょうか。
あの頃の出来事は大人になった私にも活かされており、
普通の人より仕事におけるイレギュラーには動じない自信があります。
しかしです…
もし今の私でも、グレートデンに吠えられて追いかけられたら、
私は間違いなく涙を出しながら情けない顔で逃げると思います。
diary.st著
