皆さんはペットを飼いたいと思った時、どのような方法でペットを入手しようと考えますか?
今日本でペットを入手できる方法はおおまかに4種類あります。
1,ペットショップで購入する
2,ブリーダーから直接購入する
3,保護施設から譲渡してもらう
4,知り合いから譲ってもらう
この中で一番主流で誰でも簡単に入手できる方法は、ペットショップからの購入です。
今はホームセンターなどどこでもペットショップがありますし、購入に制約があるわけでもありません。
高額ですが、お金さえあれば誰でも簡単に買えてしまうわけです。
しかし現代、無責任な飼い主の問題やお金儲けの悪徳ブリーダー問題など、不幸な命が無責任に増やされているという事実が問題視されており、ペットショップの存在自体が疑問視されているのが現状です。
そして、無責任に増やされ行き場のなくなった動物たちが行きつく先はどこか?
それは動物保護施設になります。
今は減少傾向にあるようですが、そのような施設に入れられる多くの動物たちには殺処分という悲しい運命が待ち受けています。
そうならないためにも、保護された動物たちの里親を見つけるための譲渡会がいたるところで開催されています。
ただしこの譲渡会、なかなか複雑な問題も抱えているようで、私自身もこの問題にはいろいろと考えさせられました。
今回は、私がこの問題を考えるきっかけになった、ある友人男性のお話を紹介したいと思います。
独身の癒しを求めて
私の友人Nは、30代後半で看護師をしている独身男性。
仕事が忙しく、結婚を諦めて独身を貫くことを考え始めている頃でした。
このままずっと独身……、とはいっても、激務を終えて帰ってきても迎えの一つもない日々を送るのは寂しいもの。
そこでNは、一度は飼ってみたいと思っていた猫を家に迎え入れようと考えたのです。
最初Nは、ペットショップで猫を飼うことを検討しました。
しかしその当時、悪徳ブリーダーが劣悪環境で犬や猫を繁殖させ虐待していた事件がニュースになっていた頃で、そのことを知ったNはペットショップじゃなく保護猫にしようと決めたようでした。
初めて行く保護猫の譲渡会
「……ということで、○○も一緒に付いてきてほしい。」
ある日、私の元に来たNからのLINEには、私にも一緒に譲渡会に来てほしいと書かれていました。
なんでも、男一人だと怪しまれるからだとか。
(なんで私が巻き込まれるんだ……。)
気乗りはしませんでしたが、動物好きなのはNにもバレていましたし、私も少しは興味があったので渋々付いていくことになりました。
譲渡会の場所は、ペットカフェが隣接している、ごく普通のビルの一室。
中にはもう既に何人も見学に来ている人たちがいて、ゲージの中にはたくさんの猫たちがいます。
その譲渡会は無料で誰でも参加できるようになっており、里親希望の人はスタッフと相談するという形式がとられていました。
Nは1匹1匹をゆっくり見ていき、ある1匹の猫の前で立ち止まりました。
その子は白色の長毛種で、既に成猫に成長した大人しい女の子でした。
スタッフの話によると、その子の前の飼い主は高齢の一人暮らしの方だったそうで、その方が亡くなられて引き取り手がいなかったそうです。
Nはその子が気に入ったようで、里親希望としてスタッフに相談することにしました。
厳しすぎる条件
私たちは小さなテーブルのある場所に通されて、里親になるための確認事項や注意点などの説明をされました。
里親の条件として挙げられていた基本的なものは、
1,安定した仕事と収入があること
2,代わりに面倒を見れる人が他にも複数人いること
3,ペットが飼える家に住んでいること
4,最後まで愛情を持って育てることができること
ここまでは保護猫でなくても当てはまる基本的な事なので、Nも特に気にしてはいませんでした。
しかし、そこから続く条件の厳しさに、Nも私も言葉が出ませんでした。
というのが、
5,一人暮らしはダメ(独身男性は特にダメ)
6,婚姻関係にない男女はダメ(若いカップルは特にダメ)
7,既にペットを飼っている人はダメ
8,小さな子供がいる家庭はダメ
9,高齢の方はダメ
というもの。
これを見た時は正直、この条件全てに当てはまる人はこの日本にどれくらいいるのだろうか?と思ってしまいました。
Nは独身の時点でもう既に飼える対象ではなく、かなりショックを受けている様子でした。
説明をしていたスタッフは、最初私たちを夫婦だと思っていたようで、ただの友人関係と知った瞬間に「あ、じゃあ無理ですね。」と冷たくあしらい、別の里親希望の方の説明に立ち上がって行ってしまいました。
飼おうとしてない私ですら傷つき不快に感じたのですから、N本人はもっと傷ついたに違いありません。
あとからNはボソッと、「こんなん誰が飼えるねん!」と私にツッコミを入れて悔しさをぶつけていましたが、その後冷静に考えてみたようで、
「自分の今の生活環境では猫を迎えたとしても悲しい思いをさせてしまう。」
と、ペットを飼うこと自体を諦めてしまいました。
同じ悲しみを与えないために
里親の条件がかなり厳しいと感じたのは事実ですが、それぞれの条件が課された理由について考えると、仕方ないのかもしれないと思ったのもまた事実です。
動物虐待や飼育放棄といった、保護動物が増えるキッカケを排除しようとするのは当然ですし、統計上その可能性のある環境にいる人(その人にそのような思想がなくても)を避けるのは、動物たちを守るためには間違っていないことだと思います。
条件を緩くしてしまったばっかりに、せっかく新たな家族を見つけた動物たちがまた施設に逆戻り……となったら、一番辛くて可哀そうなのはその動物たちなのですから。
しかしながら、あまりにも厳しすぎる条件を掲げて、それを満たさない人を門前払いするような体制には疑問を抱きます。
生活の在り方は人それぞれですし、満たさない条件があったとしてもそれを補えるなにかがある場合だってあるのです。
保護動物と里親が出会える機会を増やすために、ルールに縛られすぎるのではなく、その都度柔軟に対応する姿勢が重要ではないでしょうか?
kitsuneko22著
